俳句
船橋 力::俳号 船橋一歩 ![]()
1933年(S.8年句作開始)
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| 大声で大汗かひて本を読む | 処女作 14歳 |
| 初買の鉛筆けずる心細く | 遺 句 79歳 |
| 1979年〜88年 | ・ | 1990年 | 1991年 | |||||
| 1992年 | 1993年 | 1994年 | 1995年 | 1996年 | 1997年 | 1998年 | 1999年 | 2000年 |
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1979年5月(S.54) 『風雪』に初投句して、三句欄へ・・・
| 山焼の星をのこして消えにけり |
| 山焼の松明かざし四方に散る |
| 大山火消えてもどりぬ冬銀河 |
1980・12・10 「冬の植物園たずねて」
| 薦巻かる蘇鉄の影や大の字に |
1987年11月(S.62年)
| 冬うらら待つ間も楽し旅の駅 | |
| 神の灯を心に点す神の留守 | |
| 負け知らぬ木の実の独楽の艶深し | |
| 小春日や杖の替りの乳母車 | |
| 初雪の嶺一筋の雲登る |
1988年 『風雪』7月号(S.63)(平成元年)
| 菜種梅雨音の重たき土鈴かな |
| 渓へだて鶯声を競ひをり |
| 囀にしばし歩を止む白き杖 |
| 散る花を膝に急がぬ車椅子 |
| 浄らかに落花ちりばめ廟の廊 |
1990年1月(平成2年) 『風雪』1月号の30周年記念作品
『床屋日記』 創刊30周年記念俳句入賞作
| 髪鋏鳴らす生活や去年今年 |
| 皹の手に漸く馴るる髪鋏 |
| 麗かや嬰児の眠り待ちて剃る |
| 春の日に見つけし一本福白髪 |
| 春昼や剃りゆく産毛乳にほふ |
| 春昼や眠り誘ひつ鬚を剃る |
| 梅雨けぶり走馬灯めく理髪灯 |
| 梅雨深く三色滲む理髪灯 滲む(にじむ) |
| 長梅雨や鏡の翳り拭ひとる |
| 汗拭ふ五指の節くれ鋏だこ |
| 刈上げて頭真っ青の日焼顔 |
| 風鈴の一息入れる毛屑の手 |
| 毛屑の手浄め門火を妻焚きぬ |
| 研ぎし刃を指触れ試す夜の秋 |
| 妻の衿元剃り手店終ふ大晦日 |
『風雪』2月号 同人作品V 【五平餅】
| 初紅葉一葉を添えて五平餅 |
| 朝の日に裂け目深まる柘榴の実 |
| 二上山釣瓶落としの日を呑みぬ |
| 小春日や瞼のゆるむ九体佛 |
| 一枚の枯葉届けり郵便受 |
『風雪』3月号 同人作品V 【煉瓦館】
| 二上の影絵さながら冬夕焼 |
| 枯蔦や夜曲の洩るる煉瓦館 |
| 荒風にあらがふ落葉阿修羅なす |
| 酌み交す炉辺旧懐の日照かな |
| 年用意夫の鞄へメモ託し |
『風雪』4月号 同人作品V 【寒 風】
| 悴む手息吹きかけて鋏研ぐ |
| 初神楽寂と聴き入る闇の杜 |
| 反り深き堂の甍や初日溜め |
| 雪の傘たたむより先扉開く |
| 寒風や弓絃の唸り耳を射る |
『風雪』5月号 同人作品V 【 梅 】
| 細格子の影組む畳春近し |
| 梅が香や露地の飛石不揃ひに |
| 神います山の目覚めや木々芽ふく |
| 春潮の返り照柔しバスの窓 |
| 麗かや思惟観音に妣の顔 |
『風雪』6月号 同人作品V 【 蝶の舞 】
| 塔映ゆる林泉のさざ波風光り |
| 店終へて一夜一夜の雛納 |
| 修二会や炎の絵巻堂を巻く |
| 目を細め花見顔なる磨崖仏 |
| 樹林洩る日のスポットに蝶の舞 |
『風雪』7月号 同人作品V 【 灌 仏 】
| 春寒や単身赴任の小さき荷 |
| 永き日や島縫ふ舟の足ゆるめ |
| 蒲公英や鼓の音色風に乗り |
| 灌仏に順待つ稚児のむづかりて |
| 灌仏や稚児のつむりに一雫 |
『風雪』8月号 同人作品V 【 明 易 】
| 明易や手櫛ですまし宿を発つ |
| 萩若葉左右に溢れて径細る |
| 校倉の横縞に撤く新樹光 |
| 夕焼けて松葉の尖り煌めける |
| 書を膝に頁進まず梅雨籠り |
『風雪』9月号 同人作品V 【 荒梅雨 】
| 碧空に泰山木の花雄々し |
| 蓮の葉に遊ぶ水玉太りゆく |
| 荒梅雨の瑠璃沼瑠璃を失える |
| 峡の風に汗しづませてとろろ汁 |
| 耳に差すちびれ鉛筆汗つたふ |
『風雪』10月号 同人作品V 【 梅 雨 】
| 空梅雨や運河に映る倉真白 |
| 空梅雨や猫柳向きに寝る木陰 |
| 梅雨深く老舗の重き紺のれん |
| 新聞の病む手に重し戻り梅雨 |
| 噴水に眼なごませバスを待つ |
『風雪』11月号 同人作品V 【 汗 】
| 汗の指すべりて笛の律乱す |
| 汗の浮く熟睡の嬰の笑くぼかな |
| 天瓜粉はじく赤子の濃き産毛 |
| 洗髪束ね上げての夕支度 |
| 蘆茂る水路たがはずお精霊舟 |
『風雪』12月号 同人作品V 【 新 涼 】
| 新涼や童顔かへる同窓会 |
| 虫すだく枝張る木々を傘として |
| 背負い籠に蹤きて下山の赤とんぼ |
| 裾田より稲刈の始む一人かな |
| 月天心山襞峨々の底深し |
1990年9月(平成2年) 木曽駒の千畳敷吟行に同行して
1991年(平成3年) 『風雪』1月号 同人作品V 【氷河跡】
| 身を預くゴンドラの揺れ天高し |
| コーヒーの香が霧を呼ぶ山の宿 |
| 山彦に霧の応へて嶺現るる |
| 千畳を敷き染む紅葉氷河跡 |
| 小望月峨々なる山も和みけり |
| 木の実降る音の乾きて石畳 |
| 手鏡に限られし景今朝の冬 |
| 研ぎ水に浸す指先今朝の冬 |
| しぐるるや錆のまだらに鎖?(金へんに通) |
| 漣の弓なす浜や鷹翔る |
『風雪』3月号 同人作品V 【焚 火】
| 波紋なし銀杏落葉の広がれり |
| 咲き足りて山茶花こぼる二三片 |
| 汐焼けの顔を火照らせ焚火酒 |
| 忘られし真黒の小芋焚火跡 |
| 門とぢし校庭枯葉の気儘どき |
『風雪』4月号 同人作品V 【夕茶漬】
| 赤蕪の歯切れよきかな夕茶漬 |
| 白息はく我が歩に長き神の廊 |
| 剃刀を労はり拭ふ大晦日 |
| 七種粥その名を憶へ子の啜る |
| 戦ひの放映に醒む屠蘇心 |
『風雪』5月号 同人作品V 【探 梅】
| 探梅や素手でこぎ行く車椅子 |
| つかの間の日差しに羽うつ大白鳥 |
| 老白鳥群に馴染まず湖暮るる |
| 指呼の間の望郷の島夕おぼろ |
| 流氷や還らぬ島を軋み呼ぶ |
『風雪』6月号 同人作品V 【風光る】
| 駅前に僧反戦の座冴え返る |
| 鴛鴦の曳く水尾の二筋風光る |
| 回廊の朱の影浮かぶ春の潮 |
| 啓蟄や夜来の雨に土ゆるむ |
| 陽炎や錆のみ残す廃線路 |
『風雪』7月号 同人作品V 【花 筏】
| 次々と荒瀬乗り切る花筏 |
| 瀬に崩れ瀬を越へ組まる花筏 |
| 紫雲英田や昼餉の水筒喇叭飲み |
| 春の園伸ばしホースの砂まぶれ |
| あはあはと柳絮を乱す風の音 |
『風雪』8月号 同人作品V 【代田掻く】
| 恥らひつ花の触れあふ二輪草 |
| 落日の煌めきの中代田掻く |
| 瑞々し日日に皮脱ぐ今年竹 |
| 藤房の大波小波棚撓ふ |
| 峠風背に入れ啜る心太 |
『風雪』9月号 同人作品V 【野の仏】
| 青苔の匂う石組古深井 |
| 深やぐら花曼荼羅に岩たばこ |
| 夕焼けに片頬染まり野の仏 |
| 夕焼や池に逆さの浮見堂 |
| 亀石の熟寝とこしへ朝焼くる |
| 音も無く迅き流れや群れ緋鯉 *大垣の水門川へ芭蕉訪ねての吟行会7名 |
『風雪』10月号 同人作品V 【梅雨晴】
| 花卯木溶岩群るる蔭に揺れ |
| 分去れの標の傾き苔の花 |
| 空梅雨や筧も土もひびわれて |
| 向日葵や白雲乗せる浅間山 |
| 梅雨明けて藍の帯曳く千曲川 |
『風雪』11月号 同人作品V 【秋暑し】
| 涙ひく櫻の笑くぼや朝涼し |
| 木の間洩る暁光に蝉鳴き出づる |
| 朝顔や盲の母へ今朝の数 |
| 迎火の烟を払ふ幼の手 |
| 秋暑し書架の一冊逆さなる |
『風雪』12月号 同人作品V 【落 鮎】
| 岩を越す流れにまかせ鮎落つる |
| 子地蔵の紅さす唇や萩の風 |
| 秋夕焼僧文覚の塚高し |
| 四肢伸ばす湯槽や四方に蟲すだき |
| 新涼や数の増えゆく万歩計 |
1992(平成4年) 『風雪』1月号 同人作品V 【 秋 】
| 老杉の穂のまろやかに望の夜 |
| 新涼や男滝女滝の響き合ひ |
| 秋霖や佛足石の紋しるき |
| 秋の風一本杉の穂を研ぎぬ |
| 秋燈や傀儡の目鼻まるまるし |
『風雪』2月号 同人作品V 【色小貝】
| 今年藁打ち重ねては香の立ちぬ |
| 屋根石の座りの正し冬に入る |
| 冬麗ら海女の握れる色小貝 |
| 冬うらら時鐘に犬の合せ鳴く |
| 壁落ちし産小屋冷ゆる浜の風 |
『風雪』3月号 同人作品V 【木守柿】
| 白壁に置く影一つ木守柿 |
| 大鯉の跳ねて小春の日を弾く |
| 曲水の流れ緩やか落葉舟 |
| 物置となりて舟小屋冬ざるる |
| 極月や駅出る人の波迅し |
『風雪』4月号 特別作品「旅のつれづれ」
| 窟ふかく丸き墓石や初明 |
| 梅が香や土鈴に端の一字書く |
| 山葵田の流れはやまる雪解風 |
| 麗かやみな笑み給う九品仏 |
| 明日香路や風に広がるげんげの香 |
| 朝焼けや童顔の弥陀頬染めて |
| 一舟の影なき河口大西日 |
| 秋夕焼風紋の刻み深まれる |
| 秋夕焼砂丘の足跡重ね踏む |
| 秋霖や仏足石の紋しるき |
| 古戦場おそう野分の鬨の声 |
| 赤き羽根挿して面映ゆ若き僧 |
| 冬うらら水路に蔵の影つらね |
| 両の手に小貝と小春の日を掬ふ |
| 時雨るるや時鐘尾を曳く城下町 |
『風雪』5月号 同人作品V 【冴返り】
| 冴返り打つ雨音の軒を刺す |
| 数珠なせる梅の蕾や雨光る |
| 神鶏の羽ばたき枝垂れ梅散らす |
| 畳針太き指もて納めけり |
| 受験終へ口数もどるお八つ時 |
『風雪』6月号 同人作品V 【所得申告】
| 廃水車の乾き白々冴え返る |
| 所得申告済ませ外気を吸ふ旨し |
| 田楽を菜飯に添ふる宿場膳 |
| 芽柳や水浚はれて川黒し |
| 春障子使はぬ叩き掛けてあり |
『風雪』7月号 同人作品V 【片栗の花】
| 片栗の花のさざ波風立ちて |
| 水ぬるむ岩の間迅き魚の影 |
| 酒蔵の家紋けぶらす春の雨 |
| 爛漫の花天蓋に野の佛 |
| 麗かや笑顔を浸す潮佛 |
『風雪』8月号 同人作品V 【石楠花】
| 石楠花や山路の尽きて小さき塔 |
| 光悦垣若葉の風のかよふなり |
| 推の花匂ふ祠の扉のゆるみ |
| 明易し小島をつなぐ砂の帯 |
| 薫風や竹組粗き数寄屋窓 |
『風雪』9月号 同人作品V 【青梅雨】
| 門川の音の鋭きや梅雨に入る |
| 青梅雨や古墳を閉ざす岩扉 |
| 梅雨晴や拾ひし小貝透かし見る |
| 鋏研ぐ窓辺涼しき月明り |
| 夏帽子あみだに冠り腕白児 |
『風雪』10月号 同人作品V 【花 蓮】
| 窟深く降り込む雨や岩たばこ |
| 苔まとふ輪塔の影梅雨深し |
| 青田より手拭振りて友送る |
| 紺のれんを扇ぐ風音梅雨明くる |
| 花蓮の次々ひらき露揺るる |
『風雪』11月号 同人作品V 【地蔵盆】
| 水替へて金魚の舞のたかぶれる |
| 沈みつつ金魚の尾鰭こまやかに |
| 涼風に胸膨らませ時鐘打つ |
| 鐘ひびく間を夕蝉の鳴き休む |
| 茣蓙の上に子等畏まる地蔵盆 |
『風雪』12月号 同人作品V 【月見の座】
| 信号を待つ人垣や秋暑し |
| 理容灯の消えし店先虫の声 |
| 夕霧を蹴りて牧舎へ急ぐ馬 |
| 干竿を下ろし月見の座を作る |
| 綿を摘む真青の空を背に負うて |
1993年(平成5年) 『風雪』1月号 同人作品V 【法螺貝】
| 銀漠や礁を洗ふ潮白く |
| 先達の法螺高々と露払ふ |
| 稲架の裾吹かれ乱るる湖の風 |
| 天高し手綱をしかと騎馬乙女 |
| 深秋や牧舎にひくき牛の声 |
『風雪』2月号 同人作品V 【児の宝】
| 児の宝ビー玉に混じる木の実独楽 |
| 秋風に両手泳がせ一輪車 |
| 菊人形目の入れられて生けるごと |
| 手に余る鈴の綱なり神の留守 |
| 辞書の字を探るルーペや木の葉髪 |
『風雪』3月号 同人作品V 【落ち葉の舟】
| 舵の無き落ち葉の舟の瀬に揉まる |
| 池に映ゆ山を褥(しとね)に浮寝鴨 |
| 漬け残る大根土間に二三本 |
| 座禅終へ五体温もる大根汁 |
| 城の影刺す矢の如し蓮枯れて |
『風雪』4月号 四百号記念俳句
| 大漁旗押し立て百の初出舟 |
| 咲き満つるげんげ田の果墳の森 |
| 青空へ円く広ごる茶摘唄 |
『風雪』5月号 同人作品V 【流氷】
| 流氷や岬に小さき遭難碑 |
| 水仙の香のなだれけり崎の風 |
| 立春や秘仏の朱唇ほころべる |
| 玄室の絵の色ほのか春浅し |
| 籠堂洩れくる声や冴え返る |
『風雪』6月号 同人作品V 【黄金の鐶(わ)】
| 夕刊を待つ間の長し冴え返る |
| 質暖簾くぐる勇気無く春寒し |
| 春夕日塔のクルスに黄金の鐶 |
| たんぽぽを見つけて撫でゐる幼の子 |
| 御仏の伏目や春日まぶしげに |
『風雪』7月号 同人作品V 【花 筏】
| 春潮の千々に砕くる大礁 |
| 春の磯力一杯石を投ぐ |
| 陽炎へる芝に水筒忘れあり |
| 黄帽の列なし登校一年生 |
| 淀に来て風の操つる花筏 |
『風雪』8月号 同人作品V 【伊良湖畔】
| 小気味よき傘の雨音夏に入る |
| 江ノ電の大揺れ若葉匂ひ立つ |
| 薫風や屋根の尖りに風見鶏 |
| 石落とす古井の闇や五月雨るる |
| 夕凪や海振り分けの伊良湖畔 |
『風雪』9月号 同人作品V 【更 衣】
| 登校の児等華やぎて更衣 |
| 鐘韻に和する小鳥の声涼し |
| 柳影の波だつクリーク俄雨(にわかあめ) |
| 虎丘の塔つかの間隠れ俄雨 |
| や々傾ぐ虎丘の塔や俄雨 |
『風雪』10月号 同人作品V 【梅雨の蝶】
| 梅雨の蝶やうすき汚れの硝子窓 |
| 開け放つ堂の扉すべて梅雨明けて |
| 祖父よりの籐椅子のあり部屋狭し |
| 奴めく浴衣短かき合宿子 |
| 窓を打つ喜雨と柳の柔らかし |
『風雪』11月号 同人作品V 【峯 雲】
| 梅雨明けや乳吸ふ雲嬰(みどりご)の頬赤し |
| 噴水の風の意の儘(まま)姿変ふ |
| 峯雲や燈台守の家白し |
| 露草や濡れ来し足を温泉に伸ばす |
| 車椅子こぐ手の滑り朝の露 |
『風雪』12月号 同人作品V 【新 涼】
| 雷雨去りジャンク夕陽に帆を染めて |
| 新涼や砂丘越えくる浪の音 |
| ドラエもんの衣装の案山子したり顔 |
| コスモスと子は言ひ母は秋桜 |
| 団栗をビー玉替りや孫と打つ |
1994年(平成6年)
『風雪』 1月号 同人作品U 【秋深し】
| 満月や護摩の焔へ九字切れる |
| アンカーへ声援とべり天高し |
| 手に余る藷(いも)を見せ合う園児かな |
| 柿吊るす落人村の深廂 |
| 秋冷えや外温泉巡りの下駄ひびく |
『風雪』 2月号 同人作品U 【黄 葉】
| 病床にとどく陽を撫で日短 |
| 相輪をしのぐ銀杏黄葉の穂 |
| 大根提げ白き雫を曳き帰る |
| 雲母坂転ぶ落ち葉に歩を合はせ |
| 激つ瀬に挟まれ挟まるる落葉舟 |
『風雪』 3月号 同人作品U 【小 春】
| 二人にて小春の一と日庭いぢり |
| 愚痴こぼすも老の楽しみ日向ぼこ |
| 愛ほしく洗ふ大根のまぶしかり |
| 木枯らしや馬籠妻籠を見下す碑 |
| 年木積む草屋の低き軒清め |
『風雪』 4月号 同人作品U 【初みくじ】
| 沈む日に影絵となりて山眠る |
| 教会の暗きに迷ふ冬の蝶 |
| 木曽の峰雲拂はれて淑気満つ |
| 初みくじ結ぶ振袖重たげに |
| 寒鮒のはねて大笊踊りけり |
『風雪』 5月号 同人作品U 【雑 唱】
| 鬼居らぬ我が家揃ひて豆を撒く |
| 兄弟同じ武者絵の凧揚げて |
| 春雪を蹴る脚太し木曽の馬 |
| ふんわりと芥を覆う春の雪 |
| 昇りくる陽に白梅の瞬けり |
『風雪』 6月号 同人作品U 【 梅 】
| 雛仕舞ひ臥所真中に敷きにけり |
| 白磁の壷茶房に梅の香り満つ |
| 山辺より靄(もや)湧き明くる梅の里 |
| 陽炎へる山の辺の道石祀る |
| 日を透かし竹の葉擦れの長閑なる |
『風雪』 7月号 同人作品U 【落 椿】
| 陽炎へころりころりん一円玉 |
| 城跡や風になだるる雪柳 |
| 灯篭の淡き灯影や著莪の花 |
| 箒目の流れに浮ける落椿 |
| 五月人形を赤子あやしつ選る二人 |
『風雪』 8月号 同人作品U 【白 樺】
| 夕風に玉解く芭蕉や膳所の寺 |
| 石積みの棚田の真中鯉幟 |
| 白樺と幟湖面に並び映ゆ |
| 篝火の粉を浴びつつ鵜の阿修羅 |
| 滝打ちて牙の煌めく不動尊 |
『風雪』 9月号 同人作品U 【朝 曇】
| 花柘榴登校の傘へ弾み散る |
| 朝曇り木木の葉音の力無く |
| 画帖閉ぢ目休ます花菖蒲 |
| 鬼百合の溜りし雨を吐き出せり |
| 揺れ軋み江ノ電青葉を潜り行く |
『風雪』 10月号 同人作品U 【?瑰】
| 鮎魚籠へ寄りては離る親仔猿 |
| ? 瑰の淡き香りの砂丘越し |
| 夏霧のぬぐふ牧草駒の食む |
| 浜木綿の百の花びら細き雨 |
| 利尻冨士万年雪の襞三すぢ |
『風雪』 11月号 同人作品U 【雨 乞】
| 窯窓の轟々と鳴り大西日 |
| 雨乞や乾きし空を幣が切る |
| ミシンの手止めて聴き入る喜雨の音 |
| 竹林を流るる風の音涼し |
| 軒先まで朝顔の紺咲き登る |
『風雪』 12月号 同人作品U 【秋暑し】
| 道祖神の供物干からび秋暑し |
| 吊尾根を掠めて星の流れけり |
| 北海の島をつなげり秋の虹 |
| 泡立草少し刈られて地鎮祭 |
| 団栗をビー玉替り握りしめ |
1995年(平成7年)
『風雪』1月号 同人作品U 【金木犀】
| 瞬ける川灯台や秋夕焼 |
| 芋の露朝の気溜めて零れける |
| 稲刈りや真中の残る昼餉どき |
| 暮れなずむ森にこもりて鹿の声 |
| 小雨降る闇の深さや金木犀 |
『風雪』2月号 同人作品U 【枯尾花】
| 枯尾花身の細るまで風に揺れ |
| 長病のシーツに白き木の葉髪 |
| 旅先の早寝や下戸の卵酒 |
| 小春日や思出つまる旅鞄 |
| 洗濯機に小銭沈めり小春の日 |
『風雪』3月号 同人作品U 【水 仙】
| 焼藷(やきいも)の声につき行く兄弟 |
| 大根干す姉妹の声の弾みけり |
| 投網漁冬陽をはじき始まれり |
| 水仙や岬を横切る風の音 |
| 年の瀬や貼紙はがれ鳴り止まず |
『風雪』4月号 同人作品U 【初出舟】
| 理容灯の切り無く回る去年今年 |
| 大漁旗かかげ波切る初出舟 |
| 大寒や干されしタオル板となる |
| 雪かきて観音堂の径開く |
| 神将の気迫の満ちて堂冴ゆる |
『風雪』5月号 同人作品U 【探梅】
| 探梅に戻るみやげを養老酒 |
| カレンダー春まつ顔をめくりけり |
| 炒りたての豆の香放つ節分会 |
| 鬼は外叫ぶ曾孫の舌足らず |
| 陽炎へる白砂の庭や石ねむる |
『風雪』6月号 同人作品U 【棟上げ】
| 棟上げの響きや地虫穴を出づ |
| 鼻濡れて欠伸の牛の長閑なる |
| 木の芽和華やぐ色の夫婦箸 |
| げんげ田や幼児等声の駆け巡る |
| 一握の土筆供へむ辻地蔵 |
『風雪』7月号 同人作品U 【春一番】
| 片栗の花や忘るる旅の刻 |
| 尼の衣の紫紺ふくらみ春一番 |
| 露坐像の膝に夕べの落花あり |
| 春暁やまず現はれし槍ヶ岳 |
| 雪解水でいれしコーヒー山の朝 |
『風雪』8月号 同人作品U 【牡 丹】
| 学舎に弾む声援松の花 |
| 満天星の花の煌めき朝の風 |
| ぼうたんの花を囲める写生の子 |
| トレッキング若葉の森の精に酔ふ |
| 夕焼を斜めに断ちし飛行雲 |
『風雪』9月号 同人作品U 【五月晴】
| 地下鉄の出口真青や五月晴 |
| 燕子花微風に花弁震へゐる |
| あぢさゐや閉ざせし儘(まま)の勅使門 |
| 梅雨晴や一葉一葉に光りあり |
| 梅雨晴や脚立踏みポニーの餌をねだる (梅雨晴やポニー脚立踏み餌ねだる・・・半歩) |
『風雪』10月号 同人作品U 【お花畑】
| お花畑覆い流るる朝の霧 |
| 黎明やお花畑を濡れ歩く |
| 南十字星踏みゆく砂の音涼し |
| 椰子の影白砂に落す夏の月 |
| 梅雨明て足裏になじむ床の板 |
『風雪』11月号 同人作品U 【天瓜粉】
| 天瓜粉まぶし幼のすまし顔 |
| 大粒の雨にあふられ青簾 |
| 涼風や将棋の音をなつかしむ |
| 日の落つる遠嶺の黒く秋暑かな |
| 秋暑し牧舎にこもる牛の声 |
『風雪』12月号 同人作品U 【萩の花】
| ジーンズに旅?一つや萩の径 ?の字が解からない |
| 宿に脱ぐ靴よりこぼる萩の花 |
| 赤とんぼの窓へ目のゆく授業の子 |
| 吊るし柿白き机に影を曳き |
| 柯城忌や鴟尾をけぶらす秋の雨 |
1995年(平成7年) 『風雪』586月号【春の炉辺】
| 残照や湖に点々残る鴨 |
| 酔う程に声の弾める春の炉辺 |
| 喘ぐ胸整へ掬ふ雪解水 |
| 草の芽や犬の好みの散歩径 |
| アンテナに羽搏く鳥冴え返る |
1996年(平成8年)
『風雪』 1月号 同人作品U 【赤とんぼ】
| 鯖雲を天井として温泉につかる |
| 糸垂らす竿の静かや赤とんぼ |
| コスモスの花のさざなみ絶え間なく |
| 澄みきりし大気へ紅葉なだれけり |
| 渓もみぢを裂きて滔々と瀧現るる |
『風雪』 2月号 同人作品U 【木の実】
| 木の実降る音につづきて鹿の声 |
| 兄は竿妹が籠持ち木の実とり |
| 谷紅葉裂き滔々と滝現るる |
| 小春日に背を出し稚児の畳這う |
| 焼藷売るテープの声の間延びして |
『風雪』 3月号 同人作品U 【十二月】
| 立読の人影まばら十二月 |
| 庭石へ枯れし梢の影とどく |
| 太柱を巻きて登れる炉の烟 |
| 守口大根吊られ夕陽の地をなぜる |
| 注連作藁にくるまる赤子かな |
『風雪』 4月号 同人作品U 【雪 衣】
| 毛屑つく眼鏡はづして年越そば |
| 杉に巻く幣の染まれり初茜 |
| 雪衣纏(まと)ひ微笑む地蔵様 |
| 煌めける樹氷へ雪雲迫りくる |
| 暮れ残る梢や鴉の声冴ゆる |
『風雪』 5月号 同人作品U 【寒 暁】
| 寒暁の空港目覚むジェット音 |
| 風花や水鳥波に見え隠れ |
| 水溜めし河童の皿や春近し |
| 幼きの抱かれ一粒豆撒けり |
| 早春の夕陽一ぱい宿の部屋 |
『風雪』 6月号 同人作品U 【春の炉辺】
| 残照や湖に点々残る鴨 |
| 酔う程に声の弾める春の炉辺 |
| 喘ぐ胸整へ掬ふ雪解水 |
| 草の芽や犬の好みの散歩径 |
| アンテナに羽搏く烏冴え返る |
『風雪』 7月号 同人作品U 【春の風】
| 入学式黄色の帽子膝に置き |
| 繕ひし網を梳きゆく春の風 |
| 白木蓮の花盃に日の溢れ |
| 蒲公英の花径尽きて観世音 |
| 柔らかき風に飛び交ふ燕かな |
『風雪』 8月号 同人作品U 【鯉 幟】
| 群青の風呑みこめり鯉幟 |
| 高階の小さきベランダ鯉幟 |
| 轟轟と鳴る鉄橋や夏燕 |
| 蒲公英の絮犬のくしゃみに空へ飛ぶ |
| 田植機の響きを吸へり暁の空 |
『風雪』 9月号 同人作品U 【 蛍 】
| もののふの魂が蛍か一乗谷 |
| 幼き手闇へ差し伸べ蛍呼ぶ |
| 蕉翁の愛でし柴麦撓む |
| 湯上りの姉妹そろひの初浴衣 |
| 黒南風や重たく涛の巌を打つ |
『風雪』 10月号 同人作品U 【大西日】
| 夏桔梗朝日に淡き色こぼす |
| 飲み干してからりと鳴りぬラムネ瓶 |
| 父よりの今日の宿題草を取る |
| 地獄絵の堂へ隅なく大西日 |
| 地獄絵に窓より射せり大西日 |
『風雪』 11月号 同人作品U 【 秋 】
| 崩れては猶高く涌く雲の峰 |
| 人気無きベンチに憩ひ秋を待つ |
| 海の紺灯台白く秋に入る |
| 土用波次々寄する浦白し |
| 秋風や磯に残る潮白し |
『風雪』 12月号 同人作品U 【天高し】
| 杉の秀と鴟尾の向き合ひ天高し |
| 朝露や窓に座禅の影二つ |
| 良寛像萩に囲まれ童唄 |
| 秋天や甍重なり磴高き |
| 露しづく林泉へこぼせるねじれ松 |
1997年(平成9年) 『風雪』
1月号 同人作品U 【紅 葉 】
| 柯城忌や風に綾なす草紅葉 |
| 師の影の駆けめぐりけり草もみぢ |
| 蔦紅葉の絡らみ動かぬ風見鶏 |
| 山もみぢ修験の岩場包みけり |
| 落つる日へとんぼの群れの波なして |
2月号 同人作品U 【冬 隣 】
| 理容の灯途切れず廻る夜長かな |
| 暮易し灯ともす前の厨事 |
| いだく児へ落ち葉拾ひて神詣 |
| 閉店に点もす灯一つ冬隣 |
| 膝の上にひろぐ駅弁小春の日 |
3月号 同人作品U 【小春日 】
| 小春日や影の寄り添ひ遊歩道 |
| 置炬燵の寝場所取合ふ犬と猫 |
| 古手紙燃やすけむりや年惜しむ |
| 玉子酒音して喉を通りけり |
| 手の届かぬバスの吊革着ぶくれて |
4月号 同人作品U 【大 寒 】
| 塩かげん我が家の味の薺粥(なずながゆ) |
| 寒灸に耐へゐる母の背の震へ |
| 伊吹颪雪を払ひて塔を打つ |
| くつきりとくの字に折れて雪の蓮 |
| 大寒や天草の煮え湯気ゆたか |
5月号 同人作品U 【春近し】
| 節分会啄む鳩のくび忙し |
| 犬枇杷の白き木肌や春近し |
| 散歩路早咲きすみれ除けて行く |
| 手の平に星砂光り春の風 |
| 春風やお八つを知らす花時計 |
6月号 同人作品U 【 梅 】
| 一人居や夜も温めて蜆汁 |
| 宿の湯に梅見の疲れ癒しけり |
| 梅が香の闇に籠もれる丸子宿 |
| 盆梅の誇りを持ちて門に在り |
| 春霖に湖の面もくすみけり |
7月号 同人作品U 【畦を塗る 】
| 雲厚く山を隠して春寒し |
| 白壁と石橋うつし水温む |
| 痩土筆栞にせんと摘みにけり |
| 田の中に牛を遊ばせ畦を塗る |
| 健やかに赤児の寝息春の風 |
8月号 同人作品U 【孤児園 】
| 円なる大きな目や飾り武者 |
| 臥す妻へ皿に五粒の濡れ苺 |
| 孤児園の机上に一輪カーネーション |
| 明け易し馴染まぬ一夜の旅枕 |
| 夕焼や犬の一吠え羊追ふ |
9月号 同人作品U 【梅 雨 】
| 五月晴観音詣での足かろし |
| 花石榴干されし傘の上へ散る |
| ガラス戸の淡き埃や梅雨に入る |
| 薫風や微笑み給ふ六地蔵 |
| 夜の登山細き明りを頼りつつ |
10月号 同人作品U 【万 縁 】
| 戦友の語らひ尽きず明易し |
| 杣小屋のランプの投影梅雨寒し |
| ゆるやかに湧水流れ刻きざむ |
| 青葉径途絶えて小さき池に逢う |
| 万緑に包まれし池鴛(おしどり)鴦の声 |
11月号 同人作品U 【夕 焼 】
| 緑陰より湧きくる風や露天風呂 |
| 門先に水打つ匂ひ秋立てり |
| 夕焼に映えてド−ムの虹めけり |
| 水澄みし湖に影曳く岳樺 |
| 夕涼し風のはこべるの絃音 |
12月号 同人作品U 【露の玉 】
| 香煙を招き厄除秋彼岸 |
| 萩の寺地蔵の唇に紅のあと |
| 鶏鳴や石蕗の葉先に露の玉 |
| 病床の時計きざめり秋の夜半 |
| 秋の夜や咳に目覚めてまた寝息 |
1998年(平成10年) 『風雪』 同人作品U
1月号 【落 柿】
| 浮島を覆ふ紅葉や谷の風 |
| 菊酒や戦火くぐりし友減りぬ |
| 落柿の何時しかくらき朱となれる |
| 遠野里水車軋みて冬近し |
| 獲物追ふ猟犬落葉蹴ちらせり |
2月号 【冬に入る】
| 結界を越えて零るる萩の花 |
| 落剥の白壁の径冬に入る |
| たぎつ瀬や紅と黄色の落葉舟 |
| 朴落葉白き腹みせ流れくる |
| 石蕗の花数ふえてをり夜の雨 |
3月号 【沢庵石】
| 結界を越えて舞ひ落つ紅葉かな |
| 座りよき沢庵石を洗ひけり |
| 柿一つ梢に光り冬ぬくし |
| 喉仏鳴らし一気に玉子酒 |
| 火の用心子の声高く闇の辻 |
4月号 【去年今年】
| 煌煌とともす老舗や去年今年 |
| 大鳥居潮に洗はれ初明り |
| 正月の港色どる大漁旗 |
| 教会の窓透く初日膝に受く |
| 丸き背を伸ばして掛かる初仕事 |
5月号 【夫婦雛】
| 暮れなづむ青き淀みに浮寝鳥 |
| 豆撒きや這ひ這ひの児の摘み食ふ |
| 春雪や淡き灯洩るる藁屋窓 |
| 祖母よりの目鼻うすれし夫婦雛 |
| 春風や潮の香しむる蜑(あま)の家 |
6月号 【遠富士】
| 麦を踏むはるかに冨士を見つめつつ |
| 蕭条と降る鉄骨の春時雨 |
| 雛菓子の赤き袋の破れをり |
| 春暁や湖面に紅ききらら波 |
| 花の香へ寄りくる蝶の入れ変り |
7月号 【春眠】
| 春眠や片目疵つく石佛 |
| 犬走る畦たんぽぽの黄色帯 |
| 浮島の灯の瞬きや朧湧く |
| 園児等の手には重たき鯉のぼり |
| 早稲田植隅は手植や小糠雨 |
8月号 【夏の蝶】
| 明け初めて薔薇の彩極まれり |
| 夏の蝶葎(むぐら)の陰にもつれ合ふ |
| カーテンの脹らみ背なに胡瓜もむ |
| 身じろぎもせずに梢の梅雨烏 |
| 鉄骨の組まるる影や大夕焼 |
9月号 【梅雨湿り】
| 六月の雲重々し佐渡の沖 |
| 梅雨深き樹海の果てて湖現るる |
| バンガローの木肌班に梅雨湿り |
| 合掌建風の涼しく縁広し |
| 八丁蜻蛉見つめられても身じろがず |
10月号 【明易し】
| 旅靴置きし枕辺明易し |
| 空梅雨や風無く鳥の声も無く |
| 明易や耳欹てて犬の待つ |
| 細々と山懐に青棚田 |
| 青林檎の香り仄かや朝の卓 |
11月号 【夏休み】
| 涼やかな風頬を撫づ鈴鹿尾根 |
| 雨去りて木下明るく蝉時雨 |
| 夏休みと小さく書かる医師の門 |
| 分担きめ一家で洗ふ大き墓 |
| 掃苔や合はす両手の濡れし儘 |
12月号 【蔦紅葉】
| 雲払ひ虹の懸橋瀬戸の海 |
| スポット無き庭を舞台に虫の楽 |
| 草匂ふ闇の遠近虫の声 |
| 紅葉映え早瀬の音の和みけり |
| 石像の纏(まと)ふ晴着や蔦紅葉 |
1999年(平成11年)
『風雪』1月号 同人作品U 【秋 燕】
| 小さき門開きし儘や秋燕 |
| 遠くより祭太鼓や稲を刈る |
| 菊人形みんな似通ふ目の円ら |
| 落葉松のお色直しや山の秋 |
| 蔦紅葉城の白壁攻め登る |
『風雪』2月号 同人作品U 【秋うらら】
| まだらなる紅葉の色や山深し |
| 朝仕事終えて紫煙や天高し |
| 朴落葉大きを選りて持ち帰る |
| 秋うらら裾はし折りて庭手入れ |
| 秋天や笠雲かむる丸き山 |
『風雪』3月号 同人作品U 【散紅葉】
| 紫衣の袖に紛れる散紅葉 |
| 自転車の二人のまふらあ同じ柄 |
| 霜を敷く牧を駿馬の駆け巡る |
| 極月や不況を知らぬ飾り窓 |
| サンタクロース人の流れに逆らひたつ |
『風雪』4月号 同人作品U 【初 硯】
| 元日や社前に盛る大焚火 |
| 元朝や机上に本を開くまま |
| ゆつくりと墨摩りにけり初硯 |
| 大寒や彩りの無き蜜柑山 |
| かすみ草温室の狭しと開きけり |
『風雪』5月号 同人作品U 【寒 椿】
| 寒波来る背骨こきこき鳴りにけり |
| 肩布団母の命日近づきぬ |
| オルゴールの音に聞き惚れ日向ぼこ |
| 早起きの目に清清し寒の梅 |
| 一輪の重たく咲けり寒椿 |
『風雪』6月号 同人作品U 【春の風】
| 小島浮く青海原や春の風 |
| 宿木のもとに巣作り何鳥や |
| 囀(さえずり)りに今日一日の始まれり |
| 渓流を越え来し風や糸柳 |
| 暮れなづむ花満開の堤かな |
『風雪』7月号 同人作品U 【蒲公英】
| 蒲公英の辻に微笑む道祖神 |
| 片栗の花恥ぢらひて紅を刷く |
| 雨上り連翹(れんぎょう)の花なだれ咲く |
| 蒲公英を添へて祝の荷の発てり |
| 花吹雪バス待つ人を吹き隠す |
『風雪』8月号 同人作品U 【鯉 幟】
| 廻廊を吹き抜く風の夏めける |
| 賑やかに雀の声や若葉風 |
| 好天の風ふくらませ鯉幟 |
| 紫陽花の滴りに濡れ巡りけり |
| 金魚売の声に惹かれて角に待つ |
『風雪』9月号 同人作品U 【梅 雨】
| 雨風にさざ波となる青田かな |
| 青梅や空赤々と暮れ染むる |
| 梅雨晴や屋根温水器の照り返す |
| 梅雨寒や葉隠れに鳴く鳥の声 |
| 杜を透く風懐に梅雨寒し |
『風雪』10月号 同人作品U 【 猫 】
| 猫あごを敷居に預け昼寝かな |
| 草屋根に咲きて百合の香滑りくる |
| 裏道の屋敷を隠す立葵 |
| さくらんぼ青き器にもられけり |
| 七夕や星の一字を書く幼 |
『風雪』11月号 同人作品U 【蝉しぐれ】
| 蝉しぐれ車少なき散歩道 |
| 蝉声や夜明けの並木色深し |
| 灯のともる祭提灯揺れ涼し |
| 一握の芒をそえて月祀る |
| 陽の出でて万の輝き松の露 |
『風雪』12月号 同人作品U 【秋 風】
| 秋風の抜くる小路や犬矢来 |
| 稲妻に鉄塔の影浮かびけり |
| 稲妻や牧の子牛啼き合へる |
| まろび寝の足染めにけり秋夕焼 |
| 背負はれて小さき両手の葡萄摘む |
2000年(平成12年)
『風雪』2月号【小春日】
| 秋の炉辺子等の集いひて紙芝居 |
| 一陣の風に波立つ花野かな |
| 木の実降り音立て転ぶ滑り台 |
| 堀に映ゆ天守の鯱や浮寝鳥 |
| 小春日や托鉢僧の声若し |
『風雪』3月号【藁の塚】
| 朝日浴び梢に残る柿紅葉 |
| 黄帽子の登校の列息白し |
| 遅れ来し生徒のマスク顔半分 |
| 一枚の田毎朝日に藁の塚 |
| 冬椿明日は咲くよと妻の声 |
『風雪』4月号【初明り】
| 燦燦(さんさん)と穂高の嶺や初明り |
| 初鏡白き太眉撫で上げて |
| 御在所岳朝日に凛と初樹氷 |
| 幼児の素直に浸る初湯かな |
| 頬ふくらませ息吹きかけるなづな粥 |
『風雪』5月号【梅匂ふ】 病の為、最後の投句になりました
| 軒氷柱くの字に折れて地に届く |
| 校庭に響く歌声冴え返る |
| 寝覚め良し暖炉にモカの香立つ |
| 三代の雛の瞳輝けり |
| 犬ふぐり子犬が蛙を走り来る |
2001年(平成13年) 『風雪選集2000年版』より:名古屋七草会所属
| 南十字星踏みゆく砂の音涼し |
| 柯城忌や風の綾なす草紅葉 |
| 寒灸に耐へゐる母の背の震へ |
| 手の平に星砂光り春の風 |
| 田の中に牛を遊ばせ畦を塗る |
| 座りよき沢庵石を洗ひけり |
| 煌煌とともす老舗や去年今年 |
| ゆっくりと墨磨りにけり初硯 |
| 一握の芒をそへて月祀る |
| 背負はれて小さき両手の葡萄摘む |
?年
| 新涼やまれに紅さす旅の妻 |
| 北を明け広き屋敷を囲む稲架 |